初日に、ぶらぶらと街を歩いていたら、観光案内所を発見した。
そろそろ営業終了の時間だったが、案内係の方が親切に見所をいくつか教えてくださった。
その教えていただいた場所に、翌日から何日かに分けて訪れた。
歴史ある建物
郡上八幡城
街を見渡せる標高350mほどの山頂にある郡上八幡城。
現存する日本最古の木造再建城だと言う。
頂上までは、ちょっとしたハイキング気分を味わえる。
見晴台から見える町は、川に挟まれ、魚の形をしている。
大乗寺
鐘楼を兼ねた山門が重要文化財の指定を受けている大乗寺。
鐘楼門は、1804年に建立されたとのこと。
郡上八幡を襲った大火をくぐりぬけた貴重な歴史的建築物。
本堂右手前のもみじが、秋にはきれいに紅葉するそう。
古い町並
国の重要伝統的建造物群の選定を受けた、城下町の古い町並。
二階部分の、隣の家との間にある壁は「袖壁」というのだと、食事処で出会った地元の方に教えていただいた。
町家が隣り合って、連続して建てられているので、火事に見舞われた時に、隣家の窓からの火を防ぐためとのこと。
財力があると、この袖壁が屋根を超えた高さにまでなる「うだつ」が上げられるとのこと。
郡上八幡にも数軒あると、地元の方が教えてくださった。
そのことを知ったのが、滞在最後の晩だったので、探すことはできなかったけれど、次回訪れた時には探してみたい。
慣用句の「うだつが上がらない」もここから来ていると知って、驚きと嬉しさを感じた。
趣ある水の風景
いがわ小径
生活用水として使われていた用水路に鯉を放ち、通る人の目を楽しませてくれる、いがわ小径。
昼と夜とで、違う顔を見せてくれる楽しい小径だ。
やなか水のこみち
約8万個の川石で装飾してある、やなか水のこみち。
柳の木もあり、趣がある。
こちらも、昼と夜とでまた違った風景が楽しめる。
宗祇水
全国名水百選第1号の宗祇水。
飯尾宗祇が東常縁から和歌を学ぶため、この泉のほとりに草庵を結び、この清水を愛用したところから名付けられたとのこと。
歴史が学べる郡上八幡博覧館
郡上八幡の歴史がはるか昔、縄文時代から学べる、郡上八幡博覧館。
ゆっくりと見て回って、学ぶことができた。
通常は、郡上おどりの実演が見られるが、年末年始のため終了しており見られず残念。
名勝庭園・慈恩禅寺てっ草園
そして、タイトルにある通り、なかでも心を強く打たれたのは、慈恩禅寺てっ草園だった。
初日に案内所を訪れた際、外の案内板に、いくつかの名所が写真付きで紹介されていた。
その中の、てっ草園の写真に強く惹かれ、詳しい場所を教えていただいてあった。
よく晴れて観光日和の天候の中、てっ草園へと向かった。
お寺の入り口からは、写真に写っていたような美しい庭園があることは全く想像できなかった。
山門をくぐり、「庭園はこちら」の案内を頼りに、建物の入り口へと進む。
ドアを開けて靴を脱いでいると、住職と思われる方が奥から出て来てくださった。
拝観料を支払い、中へと歩を進める。
受付から、畳をわずか数畳進んだところに、美しい景色は広がっていた。
思わず息を呑んだ。
しばらく佇み、正座し、庭園の風景に見入る。
その後、順路に沿って奥へとまわる。
凍結防止で水を止めているため音が鳴らない水琴窟を発見したり、
小さな中庭を見たりしながら、また最初の部屋に戻ってきた。
もう一度、ゆっくりと庭園の風景を味わう。
庭園を見ているだけで、静かに心が整っていくような感覚になる。
ここに水琴窟の音がしていたら、もうそれだけで、心がどこまでも鎮まっていきそうだ。
私たちは、本当はこうした風景、空間、音、エネルギーの状態を、心の中に持っているのだと思う。
そのことを思い出させてくれる場所が、各地にいくつもいくつもあるのだろう。
先日訪れた出雲大社の北島国造館の滝と天神社もその一つであったと思うし、この場所もその一つなのだと思った。
呼吸が深まり、思考が止み、身体の余分な力が抜ける。
今ここ以外のどこにも居ない私。
ただそのことを味わう。
十分に味わっていたら、もう閉園の時間が近づいてきてしまった。
ゆっくりと庭園をあとにする。
水琴窟の音が聞けなかったことだけが残念だ。
新緑や紅葉も、きっときっと素晴らしいだろうから、水琴窟の音と一緒にまた次回の楽しみにとっておこうと思う。
おまけ
てっ草園で水琴窟の音が聞けず、youtubeで検索していたら、素敵な動画を発見。
しばらくの間、こちらを何度もループして聞いていたが、水琴窟の音にとても癒された。
参考ページ:郡上八幡観光協会のページ、慈恩禅寺の公式サイト