以前、突然起こった出来事で、怖い体験をした。
その時は、怖かったことも分かっていなかった。
何が起こっているのか分からず、
ただ、身体が固まり、動けない私がいたことだけを覚えている。
最近、その体験を、思い起こすきっかけとなることがあった。
鼓動が速くなり、心臓がドキドキしてくるのが分かった。
身体にも力が入り、緊張する。
手がうまく動かない。
あの頃の私とは違って、とても安心できる状況にいるのに、だ。
その事に直面していた真っ最中は、鼓動も普通の速さで、心臓のドキドキもなかった。
目の前のことに対処するために、感じることに蓋をして、麻痺させていたのだと気づいた。
その麻痺させていた本当の感情が、今、安全な状態で再体験することで、ようやく出てこられたのだと思った。
鼓動が速くなり心臓がドキドキしてきた時に、初めて気がついた。
あの時、私が感じていたのは恐怖だったのだ、と。
「怖い」より更に上をいく「恐怖」だった。
その状況を切り抜けるため、生きるため、生き残るために、
感じてはいられない気持ち、あるいは感じてはいけない気持ちだった。
身体は感情を閉じ込め、記憶していた。
安心、安全な環境になって初めて、本当の感情は出てこられる。
あぁ、あの時の私はこんなにも恐怖を感じていたんだ、ということが今頃になって分かった。
どれほど、その時は麻痺させていたのだろう、と思う。
どれほど怖かったのだろう、必死だったのだろう。
そして、まともで健全で建設的な考えも浮かばず、
頭はどれほど、ただその事態へと対処する考えのみに支配されていたのだろう。
その自分をただただ抱きしめようと思う。
怖かったね。
何が起こっているのか分からなかったよね。
恐怖で震えていた自分を抱えながら、
必死に、その時の最善を尽くして、生き抜いたよね。
よくがんばったね。
本当によくがんばったね。
もう、大丈夫だからね。
もう安心していいからね。
もうそんな状況には置かないからね。