知人の勧めで「ボローニャ紀行」という本を読みました。
人から勧めてもらうと、自分では、なかなか手に取らない本を読めるのが面白いと思います。
そして、自分にはなかった世界と出会えます。
この「ボローニャ紀行」も私にとっては、そんな一冊でした。
著者の井上ひさしさんが、イタリアのボローニャを旅した時の紀行本です。
ボローニャでは、街に住むお年寄りを助けるため、文化遺産を保護するため、街を住みやすい場所にするため、といった理由で、人々が動き出し組合を作ると、行政や銀行から援助が出て、活動が育っていきます。
そして、そういった制度自体を自分たちで作っている、とのことでした。
読んでいると、ボローニャの人々が、自分たちの住む街をとても大切にしていることが伝わってきます。
自治とはこういうことか、と思わせてくれる本です。
そして、自分たちの街を大切にしながら、その手に主導権を握り力強く生きているボローニャの人々の生き方が、とても清々しく気持ちが良いのです。
この本のなかで、とても印象的な言葉がありました。
著者の井上ひさしさんが、「平和」という言葉をその意味をはっきりさせるために「日常」という言葉を使っている、と語っている部分でした。
「平和を守れ」でなく「この日常を守る」。
こう言葉を言い換えることで、平和という言葉が、ぐっと近づいた感じがしました。
ボローニャの人々は、自分たちの日常をとても大切にし、時にはより良くしようと動き、時には心地良さを奪われないように守っているのです。
自分たちの暮らす街を愛し、家族や友人との日々の生活を楽しみ、味わい、大切にしている様子が伝わってきて、とても穏やか気持ちになります。
こういった日々の営みの先に、あるいは、その営みこそが平和なんだろうなと思いました。
また、組合を作っていく過程を読んでいると、仕事ってそもそもこういう風に作られていくんだよな、という仕事というものの原点も感じることができました。
読んだ後に、色んな余韻の残る良い本です。