樹木希林さん主演映画「あん」 心の奥に存在する誰にも奪うことのできない部分を大切にするということ

映画「あん」のポスター

学生時代に知ったハンセン病のこと

ハンセン病をご存知だろうか。

19世紀に菌を発見した医師の名前が、病名についた感染症だ。

今は特効薬も開発され完治する病気だが、

日本では罹患した人の記録が8世紀頃から残されており、

人類の歴史上、最も古くから知られ、恐れられてきた病気の一つだ。

そして、罹患した際の外見と感染の恐れから、

患者は何世紀にもわたって社会的烙印を押され、

呪いや天刑などと忌み嫌われてきた。

私が通った中学、高校には、希望者を募って、

患者さんの収容施設である療養所を訪問し、交流する機会が設けられていた。

当時、教室で配られる案内で、私は病気の存在を知ることになったが、

在学中、ついぞ施設を訪れることはなかった。

時々、学校新聞のようなもので、その交流会の様子を見かけては、一回は訪れようと思っていたのに、だ。

若い頃は、色んな関心事が次々と目の前に現れるものだけど、

その波に乗ったり飲まれたりしているうちに、交流会のことは、私の頭の片隅に追いやられてしまったのだ。

けれど、樹木希林さん主演の映画「あん」の予告を見かけた時に、

ふと、頭の片隅に追いやられていた交流会の事が思い出された。

この映画を見ることで、私は、その時の交流会に参加できたような気がした。

映画は、ハンセン病患者である主人公が、差別と偏見と隔離の日常を送る中で、

明け渡さなかった心の大切な部分と、そこから放たれる美しさが心に沁み入り、静かな余韻を残すものだった。

樹木希林さん主演の映画「あん」を観て

樹木希林さん主演の映画「あん」を観た。

人にはそれぞれ苦悩がある。けれど、同時に喜びと幸せを感じて生きることができる。

私がこの映画から受け取ったメッセージだった。

見終えた後に、得も言われぬ余韻が残る映画だった。

そこには、悲しみと喜び、絶望と希望が、等しく存在していた。

二輪の白いばら

主役となる女性、ハンセン病を患った徳江さんが、

人生で嘗めてきた辛酸、

この世の不条理への嘆き、

流してきただろう涙の量は計り知れない。

けれど、本人の口から出る言葉の数々や、生きる姿勢は、温かく愛と思いやりに溢れている。

どんなに辛い状況の中でも、ささやかな幸せと喜びを大切にして生きてきたことが伝わってくる。

アウシュビッツ強制収容所での体験を綴った『夜と霧』の著者ヴィクトール・フランクルは、

過酷な状況の中で、それでも人生にイエスと言い、

その状況下でただ生き抜くだけでなく、人間という存在を見つめ続けた。

徳江さんも、隔離施設で暮らしながら、人間という存在の残酷さや冷淡さ、醜さなど負の部分を感じざるを得ない中で、

自分の自由にはならないものではなく、自由になるものへと意識を向け、

幸せと喜びを見出して生きていたのだろう。

ある種の諦観を得ていたようにも思う。

そして、心の自由、感じる自由、考える自由、という自分の手の中にあるものまでもを明け渡すことなく、

大切に大切に生きたのだろう、と感じさせる。

紫の花々

人生には思い通りにならないことが沢山ある。

理不尽なことも山ほどある。

謂れのない圧力に遭うことも、どうにもできない状況に追い込まれることも。

けれど、どんなに小さくても屈しない部分が、ほんのひとかけら、人の中にはあるのだろう。

誰にも奪うことのできない、取り去るのことのできない、奥の奥の方に。

ピンクの小花と昆虫

いのち。

希望。

存在の芯なるもの。

誰の中にもある、その存在の声に、

どれだけ耳を傾け、どれだけ育てたかが、外側に立ち現れる。

その人がまとう雰囲気となり、在り方になり、生きる姿勢になり、

やがて、周囲の人々の内側の深い部分と共鳴していくのだろう。

そして、奥の奥にあるその部分は、「感じること」を通して触れることができるのだろうと思う。

感じることを大切に大切にしていきたい、と改めて思った。

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この記事を書いた人

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わたなべ えり

カウンセラー/セラピスト/講師/ファシリテーター
カウンセリング・セラピー・コーチングなどを融合させ、人がいのちの喜びを生きることをサポートしています。
10代の頃から心に興味を持ち学ぶ。「自分のやりたいことが分からない」、「感情が分からない」、「人とのコミュニケーションがうまくできない」、自身も苦しんだこれらの悩みに光をもたらしてくれたのは、心の学びを通じて、自分の心を見つめることでした。
悩み苦しみは、転じていのちの喜びへと通じているのだと思います。そのプロセスの伴走をさせていただいています。
好きなことは、旅、読書、音楽を聞くこと、散歩。また、自然をこよなく愛する。