樹木希林さん出演映画「日日是好日」 心の滋養となる映画 特別でない日常の一瞬一瞬が煌(きら)めきを放っていた

映画、日日是好日のポスター

心の滋養となる映画が好き

昔から、いわゆるハリウッド映画があまり好きではなかった。

ドン、パン、ジャーン、イエーイ!

とか

ああ、楽しい、ハッピー!

みたいな、

観客である私を、感情のジェットコースターに乗せて走りきるような、ストーリーと演出。

居酒屋でとりあえず頼んだビールを、ゴクゴクブワーッと飲んだ!

みたいな、そんなイメージ。

それはそれとして、もちろん否定はしないのだけど、

どうもしっくりこなくて、遠ざけていた。

だから、いつも、小さな映画館でマイナーな映画ばかりを見てきた。

いまなら分かるが、

映画を見終えた後に心の滋養となるものがあまり残らない感覚が、好みではなかったのだ。

思えば、映画だけに限らず、時を過ごした後にその感覚が残るものを、

知らず知らずのうちに選んできたのだと思う。

そのことを、今回、「日日是好日」という映画を見て、はっきりと自覚した。

映画「日日是好日」とは

作品のあらすじはこちら。

エッセイスト森下典子が約25年にわたり通った茶道教室での日々をつづり人気を集めたエッセイ「日日是好日 『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」を、黒木華主演、樹木希林、多部未華子の共演で映画化。「本当にやりたいこと」を見つけられず大学生活を送っていた20歳の典子は、タダモノではないと噂の「武田のおばさん」が茶道教室の先生であることを聞かされる。母からお茶を習うことを勧められた典子は気のない返事をしていたが、お茶を習うことに乗り気になったいとこの美智子に誘われるがまま、流されるように茶道教室に通い出す。見たことも聞いたこともない「決まりごと」だらけのお茶の世界に触れた典子は、それから20数年にわたり武田先生の下に通うこととなり、就職、失恋、大切な人の死などを経験し、お茶や人生における大事なことに気がついていく。

出典:日日是好日『映画.com』より

公式ホームページのキャッチコピーが素敵だ。

雨の日は雨を聞く。
雪の日は雪を見て、夏には夏の暑さを、
冬は身の切れるような寒さを、
五感を使って、全身で、
その瞬間を味わう。

“お茶”の魅力に気付き、
惹かれていった女性が体験するのは、
静かなお茶室で繰り広げられる、
驚くべき精神の大冒険。

出典:『日日是好日公式ホームページ』より

本作品は2018年10月に公開され、お茶の先生を演じた樹木希林さんは、公開前の2018年9月に他界された。

そのことも手伝ってか、この映画「日日是好日」は、言葉にできない感覚を私の心と身体と魂に残した。

映画を観て感じたこと

映画が始まって早い段階で、静かに涙がこみ上げた。

サラサラと流れる小川を背景に、映画のタイトルが出てくるだけのシーンで、本当に冒頭の部分だったと思う。

自分でも驚いた。

そこから先も、誰かのセリフや、何かが起きたからでなく、

本当に何気ないシーンで、私は涙していた。

緑とベンチ

特別でない日常の一瞬一瞬が、言いようもないほどの煌(きら)めきを放っていること。

心を落ち着けて、静かに内側と外側の世界に耳を傾けることで、なにかが流れていくこと、

同時に、その時、その瞬間に、「在る」自分に気づくこと。

茶道の所作や、掛け軸、お菓子など一つ一つの要素から生まれる豊かさ。

見ていると、少しずつ心が洗われていく。

感覚が鋭くなっていく。

感じることが深まっていく。

公園

この時代の平均とも言える人生を送っている主人公の暮らしの中に、

静かに存在するお茶の時間。

その時間が、時に悲しみを癒し、時に過去を癒し、時に人としての成長を実感させてくれる時間になっていた。

茶室から見える庭が季節とともにうつろっていくことや、

季節で変わる茶道具、掛け軸。

その茶室で週に一回、時を過ごすことが、

人生における荒波や変化を支える精神的支柱のような時間になっていた。

夕暮れと木

日本には「道」とつくものが沢山ある。

茶道、華道、柔道、弓道、剣道、、、。

何かを極めていく時、身体が所作を覚えていくと同時に、精神性も高まっていくのだろうと思う。

リラックスしながらも集中している状態は、ある意味で禅であり瞑想なのだと思う。

2時間の映画は、まるで坐禅をしているような、瞑想をしているような時間であった。

ただ、川が流れるシーンに涙する。

ただ、静かな時を共に過ごす師と弟子の姿に涙する。

過去も未来も、どんな考えも入り込まないその豊かな時に、

私の心と魂は震えていたのだろう。

公園に沈む夕日

思えば、茶室に流れる「時」や「空気」や「営み」が主役の映画だったように思う。

そこに行き交う人々は脇役。

大事な登場人物ではあるけれど、そのやり取りが、本当の主役である目に見えないものたちを浮かび上がらせる。

きっと、簡単なように見えて、とても難しいことなのではないかと思う。

人に華があり過ぎてはいけない。

存在感があり過ぎてはいけない。

けれど、余韻の残る存在である必要がある。

恐らく、樹木希林さんにしか表現できない雰囲気だったのだろうと思った。

見終えてしばらくは、席を立ちたくなかった。

夜遅くの回だったので、そうもしてはいられなかったのだが、

じっくりとじっくりと、心に染み渡る余韻を味わいたくなる映画だった。

参考ページ:日日是好日公式ホームページ

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この記事を書いた人

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わたなべ えり

カウンセラー/セラピスト/講師/ファシリテーター
カウンセリング・セラピー・コーチングなどを融合させ、人がいのちの喜びを生きることをサポートしています。
10代の頃から心に興味を持ち学ぶ。「自分のやりたいことが分からない」、「感情が分からない」、「人とのコミュニケーションがうまくできない」、自身も苦しんだこれらの悩みに光をもたらしてくれたのは、心の学びを通じて、自分の心を見つめることでした。
悩み苦しみは、転じていのちの喜びへと通じているのだと思います。そのプロセスの伴走をさせていただいています。
好きなことは、旅、読書、音楽を聞くこと、散歩。また、自然をこよなく愛する。