理屈なく惹かれる
一瞬で共鳴する
そういう時がある
一目見た時に、一行読んだ時に、身体に何かが走ることってあると思う
同じように、一音聞いた時に私の身体は知っていた
これは私にとっての本物であり真実であるということを
5月末、安曇野で開かれたコンサートに行っていた
豊かな自然の中で開かれた小規模なコンサート
大規模なコンサートはどうも心に響いてくるものを感じられない私には、とても嬉しい規模だった
今回は、歌い手の吉本有里さんと、ピアニスト杉丸太一さんのコラボコンサート
有里さんの歌声は以前も聴いたことがあり、歌詞とも合わせてやっぱり素晴らしいなと味わっていた
杉丸太一さんのピアノをお聞きするのは初めてだった
有里さんのリードで、杉丸さんのソロパートへと移る
ピアノで即興の曲を弾いてくださることになった
杉丸さんが、椅子に座り、演奏を始める準備をする
私は目を閉じて、その最初の一音を待っていた
鍵盤に置かれた指が動き出し、最初の一音が鳴る
その瞬間、身体に衝撃が走った
そして流れるように続く音たちに乗って、私は一瞬にして海の中にいるような、時空を超えた世界にいるような感覚になった
その音色は、「美しい」という言葉では言い表しきれないものだった
『地球交響曲』というドキュメンタリー映画シリーズに、ダイバーであるジャックマイヨール氏が出演しているものがある
ジャックマイヨール氏は、酸素ボンベなしの素潜りで、深海へと深く深く潜る
映画の中で、その海へと潜るシーンが映し出されている
深く潜るその行為について、なんの意味があるのかと問われたら、分からないし、意味など無いのかもしれない
ただ、その映像を見ていると、内なる世界の深いところへと一緒に潜っていくような感覚になる
時は止まり、考えも止み、ただ静かな地点へ向かって・・・
そこは意味を超えた世界だ
杉丸さんの演奏は、深く深く潜っていくというよりも、もう少し手前で漂うような感覚だが、似たような感覚になった
即興だから、曲の終わりも分からない
どう展開していくかも分からない
まるで海の中で、波に漂いながら身を任せているような感覚
その世界へと連れて行ってくれる音たち
安曇野への移動で疲れていた私は、半分寝ているような起きているような状態だったと思う
けれど、きっとしっかり起きていても、意識は同じ状態だったんじゃないかと思う
なぜなら、その音はダイレクトに感性に響いてくるものだったと思うから
時が止まり、考えも止み、ただ静かな地点を私は漂っていた
いつまでもこの音が、この曲が、続いて欲しいと思った
たった数分の曲が、数時間に思えた
こう文章にしてみると、まるで竜宮城に行っていたかのようだ
私たちは、感性の世界にいると、時空を軽々と超えてしまうのだろう
杉丸太一さんは、「世界の魂を解放するピアニスト」として活動をなさっている
帰り際にCD「愛のパワー オキシトシン」を一枚購入させていただいた
帰宅してから聞いてみたら、CDに収められた音楽は、またその世界へ連れて行ってくれた